メルのこと

メルのこと

ここのところ、よくリクメルを連れて散歩をしていたのを思い出します。

リクはふらふらと気になる所で立ち止まったり

何か食べれるものが落ちていないかと物色したり

犬を見かければケンカを吹ったりと気の抜けない散歩でしたが

メルは用を足す以外は脇目も振らず歩くタイプ。

リクはアイコンタクトのとれる子でしたが、メルは全くこちらを見ることもなく

黙々と、ただただひたすら歩いていました。

散歩は私にもリクメルにも欠かせないとても楽しい時間でした。





2023年5月31日

この日愛しいメルは天使になった。

病気と戦いが始まって1年と1ヶ月余り、この日で丁度16歳5ヶ月だった。

この日のことは記憶が曖昧で、余りよく覚えていない。

覚えているのはメルに私の声が届いてるかどうかが心配で

耳元で大きな声で何度も何度も名前を呼び続けたこと。

そばにいると言うことを伝えたかった。

リナもアミもすぐ来るよ。それも伝えたかった。

もっと伝えたいことは、いっぱいあったはずだ。

でも、その時はただただひたすら 呼び戻したい気持ちで

必死に何度も何度も名前を呼んだ。



ひとつ悔やんでいるのは「ありがとう」が間に合わなかったこと。

一番最初に伝えたかったのは、本当は「ありがとう」なのに。





メルが天使になった日から、なかなか通常の生活に戻る事ができず夜も何度か目が覚める。

まだ今になってもメルの姿形がない生活に違和感がある。

音もない。

聴き慣れていた徘徊している時の脚を引きずる音。

自分で立ち上がれない時に呼ぶ「ウォン!!」と言う鳴き声。

息遣い。

メルの音のない毎日は静か過ぎて落ち着かない。


1日4回に分けていたご飯の時間も、今はソラの朝ごはんと夕ごはんだけになった。

今でも朝と昼と夕方と夜は時計を見てしまう。

特に夜食の時間帯は必ず「いつもだったら…」と毎日思っている。


何よりもリクとメルが小さくなって並んでいると言う事が

とても不思議に思えてしまう。


もしかしたら夢を見ているんじゃないのかな

目が覚めたらリクとメルが二人揃ってちゃんといるんじゃないかな

これは長い夢なんじゃないかな

いい年をして、そんな風な事を考えたりする。

そうやってほんの少しの時間だけ気休めが欲しいのかもしれない。

現実と向き合う時間をほんの少しだけ止めたいのかもしれない。

この三年余りの日々が長い夢であって欲しい。

単純にただの私の願望。

夢は寝ている時に見るか未来に向かって見るもので

過去に遡って見ることは出来ないのに。





メル

メルは本当に凄い子。

最期の最期まで自力で立ち上がり、自力で歩いた。

天使になる前日までご飯もしっかり完食した。

病気との戦いにも立派に挑んだ。


腎不全にも負けなかった。

最終的にはメルは老衰で天使になったのだ。

ってことは腎不全にはやられなかったってことだ。

「メーちゃん凄いね」

この1年余りで何度この言葉を口にしただろうか。

何度も襲ってくる様々な病に打ち勝って

16年数ヶ月、ずっと私たちのそばにいてくれた。


メーちゃんって凄いね 本当に凄いね



メルは小さい時から、ほとんど手のかからない子だった。

ちょっと神経質で、とっても焼きもち焼きだったけど

犬と絡む事がなければ、何の心配もいらなかった。

そんなメルが認知症とわかった時は、戸惑った。

重篤な腎不全と言われた時は途方にくれた。

脳梗塞になった時は絶望しかけた。

でもそれでも自力で立ち上がり歩くメルを見ていると

辛いのはメルだ。私がこんなんでどうする!!と

何度何度も私の気持ちを奮い立たせてくれた。

物言えぬ動物たちは、こうして体の全てを使って

私たちに大事なことを伝え教えてくれているのだ。


メルの看病が始まってから周りの人に「大変だね」と、とても心配して頂いた。

今年に入ってからは特に、メルの眠りが浅くなり極度の睡眠不足だった。

それでも私たち家族の中では”大変”と言う感覚は、ほとんどなかった。

どんな状況でも状態でも、メルと一緒にいれると言う事が本当に嬉しかった。

認知症だろうが腎不全だろうが、オムツ生活だろうが

一緒にいれる事が最高にハッピーだったからだ。

前にもここで話した事があるが、私はリクを迎えた時から

歩けなくなったら私が脚になる。

目が見えなくなったら目になる。

耳が聞こえなくなったら耳になる。

そう強く思っていたから、メルが病に伏した時には全力以上で支えると

普通にそう思っていた。

私が支えると…。


ところが、、、、、

メルが天使になって初めて気がついた事があった。

私がメルを支えているつもりが、それ以上にメルが私を支えてくれていた。

私たち家族を支えてくれていた。

とてもとっても大きな力で。


メルがいるから

メルがいるから

メルがいるから

このもはや呪文みたいに毎日我が家で口にしていたワード。

この何のたわいもない言葉はメルが一緒にいることを意味していて

こんなワードですら私や家族を支えてくれていたのだ。


メルの存在はとても大きくて、本当の天使になってしまった今は

リクの時にあいた穴に、更にブラックホール級の穴をあけた。





居場所

犬や猫が亡くなった時に、虹の橋を渡ったとか

虹の橋の手前で飼い主を待ってるとか、そんな話をよく耳にする。

多分リクとメルは、今もまだこの家にいる。

きっと私たちがここにいる限り、ずっとここにいる。

適当に外に出て自由に散歩したり、好きな時に家にある物を食べたいだけ食べて

お気に入りの場所で寝たり、私たちにまとわりついたり

一緒に横になったり、、、、、。


私にとって気持ちの落とし所は、虹の橋ではなくて

ここ、この家だ。


もうメルは認知症で徘徊することもないし、腎不全でもない。

美味しい物を食べたい物を目一杯食べれる。

リクも、腱が切れた左後ろ脚も元通りになって元気に走り回っている。

二人とも大好きな家で何の不調も不便もなくノンビリしている。

そう思えば、ほんの少しだけ寂しさが紛れる気がする。



私が虹の橋を渡ることになった時に一緒に行こうね

と、勝手にリクメルと一方的に約束した





ありがとう

メルが病に伏してから、本当にたくさんの人に助けて頂きました。

アドバイスをして頂いたり、励まして貰ったり、心配して頂いたり

メルに会いに来て頂いたり…。

感謝してもしきれないぐらいです。

まだわんこがいない生活に慣れず寂しさも日々増していて

泣いてしまう日もありありで、メルの物も何も片付けられないのですが…

この20年弱のわんこ生活は

最高にハッピーでした。

お世話になった皆さま、本当にありがとうございました。




メル、ありがとう

16年5ヶ月、いっぱい長生きしてくれてありがとう

たくさん思い出ありがとう

ハッピーな毎日をありがとう

ずっとずっと大好きだよ。

コメント