リクのこと〜episode2〜

リクのこと





ようこそ

白黒モフモフを迎える事になり、あれこれと必要なものを揃えた。

店員さんに言われるがままに

人間にせよ、動物にせよ、初めて家族として家に迎え入れる時は

何とも言えない気持ちになる。

上手く当てはまる言葉が出てこないが、神聖な新鮮な気持ちが一番近いかもしれない。

後々この神聖な新鮮な気持ちが、ものの見事に家の物と一緒に破壊される事になる


次の日、長女と白黒モフモフを迎えに。

あんなに自分で「この仔ください」ときっぱり言ったのに

本当に我が家にワンコが来るなんて…と信じられない気持ちだった。

”あの白黒がこれから毎日家にいるんだ”

”この先十数年の間、ずっと一緒にいるんだ”

”家族が一人(頭)増えるんだ”

”何だか夢みたいだ”

あんなに乗り気じゃなかった私はどこに行ってしまったのか?

店に着くと店員さんが待っていた。

「今連れてきますね!」

ほんの数分なのに、待ちきれない私と長女。

「すみません、普通はパピー用の可愛い入れ物があるんですけど…。

ちょっと大きくて入らなくて…」

可愛い白黒モフモフは、普通の段ボール箱に入れられて来た。

捨て犬スタイルだけど、一応可愛くリボンなど付けてもらっていた

「さあ、おうちに帰ろうね。」

ここから16年の間ずっと、これが彼が喜びホッとするワードになる。


















次女には内緒にしておいたので、学校に行っている間に

前日から隠していた諸々の必需品を出し、組み立て、整えた。

そしてホームビデオを充電満タンにして次女の帰りを待った。

「ただいま〜!!」と帰ってくる所からムービーを撮り

モフモフを抱っこした長女が「弟だよ」と次女を迎える。

次女は何度も「ウソ!?ウソでしょ!?本当!?」と言ってモフモフを抱っこして涙ぐむ。

今思い出してみると、何ともおめでたい家族だ

でもこれ、やっておいて良かったと、リクが天使になった今つくづく思う。

”リクは私たちを最初からこんなに幸せな気持ちにしてくれたんだ”

何度も繰り返して観ては、何度もそう同じことを思うのだ。


白黒モフモフは家族会議の結果、名前はリクになった。

うちに男の子がいる。

息子ができた。

嬉しいやら、くすぐったいやら、これもまた言葉では言い表せない気持ちだった。

”これから新しい生活が始まる。どんな毎日になるんだろ…”

この時は色んな事を想像し期待して、頭の中は楽しい毎日しか描いていなかった

これからの数年間、暴れんボー将軍との真剣勝負の毎日は待っているとは

私たち家族は誰一人として思ってもいなかった。


リクが来た日、よくよく覚えているのは

小さかったリクを抱っこしてクリクリした目を見ていて思ったこと。

”リクが歩けなくなったら、私が足になろう”

”目が見えなくなったら、私が目になろう”

”耳が聞こえなくなったら、私が耳になろう”

そして

ようこそリク、これからここがずっとずーっとリクの家だよ



episode3に続く





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